おすすめ その4
田崎草雲が、妻菊子を描いた二枚の絵が興味をひきます。
一枚は、若い日の草雲夫妻が隅田川の畔の料亭で・友人の画人富取芳童酒を飲んでいる絵で、菊子は左手に徳利を持ち、右袖で。元をおさえ笑っている。初々しい若妻の風情です。
もう一枚は「狂妻菊子像」。眉根にしわをよせ、どこを見据えているのか、蕊い眼をしている、鬼気迫る絵である。浅草今戸小町といわれたほどの菊子の、この無残な変ザようを、草雲はどんな気持で描いたのだろうか。
深窓育ちの菊子にとって、草雲との二十年の生活が並々ならぬものであったことを思わずにはいられない。同時に草雲の深い悲しみが伝わってくる気もします。
